天皇が勅定されるといふ伝統が無視され、臣下の権力機構たる政府が決めたといふことは、德川幕府でさへ行ひ得なかったしなかった重大なる伝統破壊である
元号制度は支那からわが國に伝へられたが、わが國においてその本質・性格は全く変化し、権力者の國家國民専制支配の手段ではなくなり、國家國民の幸福、國家の安穏を祈られる上御一人日本天皇の祭祀となった。
「元号」を立てることは、時の流れに節目をつけ、願望と祈りをこめるきはめて高次にして大切なる営みである。しかも、わが國においては、大化以来千年以上の歴史と伝統を持つ。
稲作國家日本の祭祀主であらせられる天皇にとって、時代に節目にをつけ、時を授けるのは大切なるご使命であった。
これまでの歴史を顧みれば明らかな通り、新元号を建てることによって、時代転換、世直し、國家の新生、維新が行はれてきた。
天皇のみのご使命である元号を定めることは、決して権力行為ではなく祭祀であることは、「元号の勅定」が天皇の「統治権の総攬者」としての「國務・政務」について規定されてゐる『大日本帝國憲法』ではなく、「卽位ノ禮及大嘗祭」などの即位に関はる宮中における祭祀についてのみ規定されてゐる『登極令(とうきょくれい) 』に規定されてゐることによって明白である。
明治以後は不文の法のみならず成文法においても明治二十二年(一八八九)二月十一日、『大日本帝國憲法』と同時に公布された『皇室典範』によって一世一元が確認せられ、改元の手続きは『皇室典範』の附属法である『登極令』(明治四十二年【一九〇九】二月十一日公布)において「第二條 天皇踐祚ノ後ハ直ニ元號ヲ改ム 元号ハ樞密顧問ニ諮詢シタル後之ヲ勅定ス 第三條 元號ハ詔書ヲ以テ之ヲ公布ス」と定められてゐる。
近代成文法において、天皇陛下の御意思にあらざれば元号は改めることはできないと明確に規定されてゐる。そして、元号の勅定は、大嘗祭などと同じく、天皇の行はせられる祭祀なのである。
内閣は、この度の新帝即位に伴ふ改元につき、「國民生活への影響を考慮して」「経済界や國民生活の利便性を考へて」即位に先立つ四月一日に政府から新元号を発表することとした。そして、天皇陛下の勅許も聴許も承らず、新しい御代の元号が定められてしまった。これは、君主たる上御一人日本天皇が勅定あそばされるべき「元号」が、臣下たる内閣によって決められたといふ事であり、元号は天皇の勅定によるといふ千数百年にわたるわが國の伝統が、無視されたのである。重大なる國體隠蔽である。
内閣がかかることを行ったのは、「天皇の事前許可を求めれば天皇の國政関与を禁じた憲法に反する」といふ考へ方に基づくと言はれてゐるが、繰り返すが、元号の勅定は、天皇の権力行使ではないし、政治権力行為ではない。「天皇の祭祀」の重要な事柄である。
政府も國會も、皇室や日本の伝統よりも『現行憲法』の規定を重んじる姿勢を貫いてゐる。「即位の大礼」においてもさうであった。『現行占領憲法』はまさに國體破壊・國體隠蔽の亡國憲法である。一刻も早く全面否定しなければならない。
明治維新に際して明治天皇が「一世一元」の制を定められ、また昭和五十四年制定の「元号法」においても改元は皇位の継承があった時、とされており、改元は新帝によるものと理解されるべきである。
「ついに日本は、天皇が『時間空間』を統治される國ではなくなった。内閣総理大臣以下政治権力者が『時間』を支配する國となった」と極言することも可能である。
報道によると、安倍総理は、天皇陛下の政治への関与を禁じた『現行占領憲法』第四条に抵触しないやう配慮しつつ、「新元号」決定前も決定後も、皇居・東宮御所に何回か参内し、天皇陛下、皇太子殿下に選考が元号にご説明申し上げたやうである。天皇陛下、皇太子殿下のご報告申し上げ、ご意向をうかがったと思はれる。
『現行占領憲法』には、「第四条 天皇は、この憲法の定める國事に関する行為のみを行ひ、國政に関する権能を有しない」と書かれてゐる。権力者ではあらせられない日本天皇は、「権力の制限規範」である『現行憲法』によって規制される御存在ではあり得ない。天皇・皇室は「憲法」を超越した御存在である。天皇は権力者ではあらせられないのであるから、権力の制限規範たる成文憲法に規制されない。
しかるに新しい元号は、天皇が勅定されるといふ伝統が無視され、臣下の権力機構たる政府が決めたといふことは、德川幕府でさへ行ひ得なかったしなかった重大なる伝統破壊である。
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